農学国際協力
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途上国農業分野の開発協力:食料安全保障と栄養改善の視点から
田中 理
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2018 年 16 巻 p. 79-84

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抄録

11,000年ほど前に世界で農耕が始まって以来、農業は人口の伸びを支えてきたが、現在、世界の食料不足人口は8.15億人にものぼり、1.55億人の子供が慢性的な栄養不良状態にある。一方、食料安全保障の定義には栄養の観点が含まれ、食料生産に留まらず摂取まで視野に入れることが提唱されている。さらに、栄養改善のためには、農業、保健のみならず複数分野の連携が必要とされている。しかしながら、歴史的にみれば、途上国農業分野の開発協力は、生産と収入の向上を重視し、栄養改善まで届こうとしたものは限られてきた。2016年、栄養改善が主要な国際潮流の一部となり、SDGsにも制定されているなか、独立行政法人国際協力機構(JICA)はアフリカ開発のための新パートナーシップ事務局(NEPAD)とともに「食と栄養のアフリカ・イニシアチブ(IFNA)」を立ち上げ、マルチセクター・アプローチを通じたアフリカの栄養改善に取り組み始めている。食料生産から摂取に至るフード・システム全体を視野に入れ、関係分野とも連携した農業分野の途上国開発協力が、農耕を始めた人類の目的ともいえる食料安全保障と栄養改善の実現に不可欠となっている。

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