日本知的資産経営学会誌
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太陽熱を利用した淡水化技術と新規節水農法
迫り来る食糧価格高騰時代に備えて
實野 孝久浜部 薫實野 雅太
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2019 年 2019 巻 5 号 p. 10-21

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抄録

現在の76 億人と言われる世界の人口を養っているのは,「緑の革命」と呼ばれる機械化,大規模化と肥料,農薬を大量投入する現代農法であるが,その工程のすべてが石油を大量に消費しているため,農産物の価格が石油価格に追随する事態を招いている。今後の石油コストの上昇が続けば,食料価格の上昇を生じ,途上国の貧困な地域の住民が食料を得られない「経済的な飢餓」を生じることが予想される。また,温暖化や寒冷化などの気候変動により食料生産に支障が出る可能性もあり得る。そこでまだ農地として活用されていない乾燥地の太陽エネルギーに着目し,太陽熱で塩水などを淡水化し,高度な節水が可能な農法と組み合わせれば,石油価格の上昇や気候変動があっても,乾燥地帯の住民の生活を支えることが可能となると考えられる。また,現地の植物残渣から肥料や農薬を生産して,省力化農法と組み合わせれば,物資の運搬が困難な僻地でも農業生産を行える。本稿ではわれわれが開発してきた太陽熱淡水化装置と,ストーンマルチを用いた省力化農法,水中放電によるリグニンの肥料化などによる乾燥僻地でも可能な淡水化農法について報告する。

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© 2019 日本知的資産経営学会
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