照明学会雑誌
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タングステン電球の能率と寿命との関係
猪狩 満和
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1926 年 10 巻 5 号 p. 217-225

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抄録
與へられた太さの纎條を有するタングステン電球の能率と壽命との關係は、一般にl/lo=(ec/e) kの様な指數式で表はされて居る様である.茲にl及びloは、最初の能率 (ルーメン・パー・ワツト) が夫々e吸びeoである様な電壓で點火せられた時の壽命であつて、kは主として、纎條の太さとその性質とに從て變化するものであるが、與へられた電球に就ては能率の何如に係らず一定の値をとるものと考へられて居る、所謂壽命指数である。この式が果して實際の電球の能率と壽命との關係を表はして居るものであるかどうかといふ事は、實際を俟たなければ決定の出來ない事と思はれる。製造者の違ふA、B二種の電球の各々に就て、夫々違つた能率に於ける壽命を求めてこの關係を定めたのに、A電球に於てはよくこの式で表はされ壽命指數は一定であるのに、B電球に於てはこの式では表はすことが出來ず壽命指數が能率に依て變化すると考へなければならない事を知つた。
さてタングステン電球の壽命は主としてその纎條の蒸發に依て支配せられるものであると考へられるから、その蒸發度から壽命を計算する事が出來るかも知れない。今纎條は、その中に流れる電流が或る一定の割合だけ減じた時に切れるものであると假定して、違つた能率の時の壽命を計算し、そして能率と壽命との關係を求めたのに、これは指數式で表はされ、指數の値としては7.5を得た。普通の電球に就て實際的に求めた値は、纎條の細い方で6.6位、太い方で7.4位でめるから、實際の電珠の指數の値は、繊條の太い方では計算から出した値と比較的よく一致して居るけれども、細い方では實際の値は遙に小さいのを認める。これは電球が機械的の故障で切れる事は低い能率で長い間點いて居つたものの方がその確率が多く、從て能率の低い方が比較的に壽命が短かくなり、その結果指數が小さくなるといふ事で説明せられ、且つこの様に説明するならば、細い纎條は切れ易いために纎條の細い方では指數が小さくなる事も了解せられるのである。
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