照明学会雑誌
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太陽熱に就て
溝尻 房藏
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1927 年 11 巻 3 号 p. 134-147

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抄録

反射鏡による太陽熱の利用を考へる事は、私にとつての大いなる道樂である。斯くて反射鏡で利用し得べき太陽の『エネルギー』には制限がある。故に『エネルギー』滑費丈明の限りなき膨脹は天地共に許さざる所である。詰まり自然は人類に向つて消費『エネルギー』の制限を要求する課だ。併し人類はこの地球が、人類にとつての永遽の佳居である事を希ふて止まぬ。
そこで私共人類は『エネルギー』に封する今後の態度を大に改めなければならない則ち今迄の『エネルギー』の無分別なる肚會的紹濟化より今後は其宇宙的経濟化に向つて本一歩を進める事であり、これが爲めに今日の如き『エネルギー』の槻械化、商品化は韓じて個人的人格的交渉へと其方向が直さるべきである。
本能生活をする動物は頴の宇宙経濟の極致に生きるべく馴らされて來た。我等の瓶先たる原始人も亦之れに近い生活を通して而も個人的人格的に『エネルギー』と交はり、途に太陽を神にまで崇拝するに至つた。私共は理性てう武器を手にして、今や燃料丈明の限りなき膨脹の爲めに朽ちんとする永逡の住居を見詰め、故郷を慕ふの情止み難きものである。

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