網膜の視細胞には蛋白の他多量の類脂肪, 殊に燐脂體が多量に含まれて居り, 光の作用で減少する. 網膜から光によつて燐酸や稍複雑な含窒素化合物やヒヨリン等が遊離する. 是等の現象は盲にした網膜では起こらない. 從て視質は感光性の強い燐脂體の一種ではないかと考へられる.
視紅は分解してビタミンAを出すから一種のカロチノイド系の色素と思はれ, 視質に結合して増感作用を營むものと思はれる. 是等の物質の光分解後, それを再生せしむるためのエネルギーは, 網膜内で特に旺盛な解糖作用によつて供給せられるやうである.