抄録
2個の提灯を併置し. て同時点灯し, 提灯より出る赤・緑・黄・白の4色光を250mの距離から被検者にみさせて, 被検者の示す色感について検討を試みた. 被検者は異常者18名を含む28名である. なお同時に石原・小口・大熊諸氏の仮性同色表, アノマロスコープ及び色相配列検査法 (小尾氏) による検査を実施して提灯試験の成績と比較検討した. これらの実験によつて色覚正常者は色光を誤認することなく, 又異常者は常に特有な色感の誤りを示すことを知つた. 誤認の程度は色覚異常度と比例している. 異常者ではprotanoの方がdeuteranoよりも色光を見誤り易い傾向があり, 又Test colorについては誤認を起させる率は黄色光が最も多く, 白・赤・緑の順に少く, 夜間は日中より見易かつた. 各検査法成績との相関は仮性同色表間のそれに比べて概して低かつた. 以上の成績から信号灯を誤認するか否かは色覚異常者の簾別試験として有意義であり, 又異常度の標識としても価値があると推測した.