2017 年 1 巻 1 号 p. 154-159
本研究では,台湾の中でも特に都市化の著しい台北市を研究対象地域とし,デジタル化を行なった過去と現在の土地利用図を利用した土地利用の変化について考察を行なった.次に,地球観測衛星Landsat-5 /TMを用いて2時期の地表面温度の抽出を行い,土地利用変化が地表面温度の分布に与える影響について評価を行った.その結果,他の土地利用と比べて市街地は相対的に地表面温度が高くなるという傾向が確認された.また,市街地に隣接する土地利用は市街地に近いほど地表面温度が高くなることも確認された.これは,市街地に近い土地利用には市街地から離れている土地利用よりも市街地を構成する成分(アスファルトやコンクリートなど)が多く含まれていることや土地利用図をデジタル化する際に生じた位置情報のずれによって地表面温度との位置と正しく一致しなかったことが考えられるが,このことからも土地利用の変化と地表面温度の関係について正確な評価を行う場合,土地利用の境界領域の取り扱いについて十分に注意を行う必要があることが示唆された.