造園雑誌
Online ISSN : 2185-3053
Print ISSN : 0387-7248
ISSN-L : 0387-7248
花壇用一年生草花の生育開花と観賞効果におよぼす植栽間隔の影響
鶴島 久男
著者情報
ジャーナル フリー

1970 年 33 巻 3 号 p. 15-21,36,38

詳細
抄録

花壇は “人工的植物群落” であり生態かつ、形態の同じか異なる植物グループの組合せを構成させ、それぞれを共存して生育開花を続けさせる必要がある。また花壇の観賞効果を高めるため一定面積に過密に植物を植栽することも行なわれている。この試験は花床に一年性花壇用草花を植栽するばあい、どのくらいの植栽間隔をとれば生態かつ形態的にもよく、また長期の観賞上からもよいかを知るとともにその要因も明らかにしようとして行なつた。
1.試験材料には代表的な花壇用種であるパンジー、サルビア、フレンチ・マリーゴールドを用い、次の3つの試験を行ない、その結果をここにまとめた。
2.第1の試験は花床に植えられた草花がどのような過程で株が広がり、開花が増加しそれによつて観賞価値が変化するかを調べた。本試験ではその測定値より花床平面における地表部、茎葉部 (緑色) 、花部 (着色) の百分比を求め、その時期別変化を図示し、実測値、視覚に近い構成図と比較したところ、花壇の観賞効果は地表部が僅少か全く無く、花部の全面積に占める割合が多いほど高いということになるが、この結果からはパンジーは30%前後、サルビアでは40%、フレンチ・マリーゴールドでは14%が最高値で何れも感覚的にかなり美しい状態であつた。
3.第2の試験では植栽間隔と花壇を構成する植物一個体当りの開花と生育、一定面積における開花密度の変化との関係を調査したが、間隔がせますぎると開花密度は高いが、一株当りの開花数は少なく、草丈はやや徒長気味、広すぎるばあいはその反対の結果が得られた。
4.第3の試験は植栽問隔の相異と地上部の生育量との関係を調べたが、せまい間隔は茎葉、花部とも貧弱な生育を示し、間隔が広くなるにつれ生育量や開花量が著しく増大した。
5.以上の結果から適当した植栽間隔はパンジーでは約20cm、サルビアおよびフレンチ・マリーゴールドでは20~25cmくらいであつた。なお、これらは各種類品種の発育相、分枝生態、草型、開花性と関係があり、供試種類および品種以外のものについても形態および生態の面から分類し適正な間隔をきめるべきであろう。

著者関連情報
© 社団法人 日本造園学会
前の記事 次の記事
feedback
Top