造園雑誌
Online ISSN : 2185-3053
Print ISSN : 0387-7248
ISSN-L : 0387-7248
都市環境における快適性の指標としての緑の量的質的基準化に関する研究
高橋 理喜男野田 敏秀
著者情報
ジャーナル フリー

1975 年 39 巻 1 号 p. 10-19

詳細
抄録

都市住民がそれぞれの日常生活圏域の中で, 自然の緑との直接的間接的接触の機会が十分に保障されるような都市環境を回復し, あるいは形成していくことは, 今日の都市計画の重要な課題である。そのために, 緑からみた望ましい環境指標の設定が必要とされる。
本研究は, ある一定の生活空間における緑との物理的接触頻度を左右する緑の質や量と, そこで日常生活を営む人間の緑に対する充足感として表現される心理的・心情的反応の度合-緑意識度-との関連性を追究することによって, 環境評価あるいは環境指標の具体的基準を確立するための手がかりを与えようとするものである。
その最初の試みとして, 大阪府岸和田市を対象地域にとりあげ, 空中写真より得られた樹木・樹林から成る緑の分布と, 質問調査による住民の緑意識度との関係を解析した。緑の分布は, 仮定された生活圏半径150m, 250m, 350m, 550mの各圏別に緑被率として表現した。その結果はつぎの通りである。
1) 緑被率別に緑意識度の構成比を累積曲線としてグラフによって表現すると, 150m圏と250m圏は極めてよく似たパターンを示し, 以上の350m圏域になると, そのパターンが変ってくる。このことから, 日常生活の緑意識を支配する圏域は, ほぼ250m圏と推定される。
2) 緑に対する心理的充足感を維持するために必要な緑被率の閾値は, 15%附近にあるように思われる。
3) 地域住民によって親しみをもって受入れられている樹林・樹木の立地のタイプは, 様々であるが, いずれも, ランドマーク的資質を備えている点で共通している。これらの緑まで居住地からの平均距離は, 300~500mの範囲内にあり, その緑の公開性の高いものほどこの距離が伸びる傾向がみとめられる。

著者関連情報
© 社団法人 日本造園学会
前の記事 次の記事
feedback
Top