抄録
本研究は生命保険会社の契約高の落ち込みが、本来独立しているべき資産運用でのリスクテイキングに与える影響を分析している。「意思決定者が満足する最小の成果水準」を意味するアスピレーション・レベルと実際の業績の乖離がその後の企業行動に影響を与えるとする企業行動理論からの考察により、筆者は次の2つの仮説を提示した。(1)保有契約高がアスピレーション・レベルを下回るほど、資産運用でのリスクテイキングが促される。逆に、(2)新契約高がアスピレーション・レベルを下回るほど、資産運用でのリスクテイキングが抑制される。わが国すべての生命保険会社に関する2002年から2015年までのパネルデータに基づく分析結果は、いずれの仮説も強く支持している。