1986 年 36 巻 7 号 p. 402-408
著者らの考案した引張試験装置を用い, 共晶の晶出を伴い, しかも結晶粒径の異なるAl-2~20%Cu合金およびAl-2~7%Si合金の凝固過程での引張強さおよび最終凝固部の局部伸びとして表される変形能を測定した。
(1) 変形能は凝固しつつある合金でのマイクロクラックの発生および伝播の尺度として考えることができる。
(2) 合金は, 晶出相の成長過程およびそれに伴う残留液相の挙動に応じて, 試験片の形状を変えて変形できる状態 (ステージI), 変形能が急激に減少する状態 (ステージII), 明らかな強度増加が認められるが変形能が非常に小さく脆弱な状態 (ステージIII) および引張強さと変形能が急激に増加する状態 (ステージIV) を経て凝固を終了する。
(3) 共晶を晶出するAl-2~20%Cu合金およびAl-2~7%Si合金では溶質量が増すにつれて, 引張強さの発生が遅れ, そして変形能が大きくなる。また結晶粒の微細化は変形能を大きくする。
(4) 変形能の大きさはデンドライト界面におけるマイクロクラックの発生および伝播の程度に支配され, 凝固組織形態 (固相率, 晶出相の大きさ, 形状や種類等) に依存する。