抄録
舶用ディーゼル重油の超音波処理について, 特にこの目的のために開発された装置を用いて, その効果を実験的に調べた.
超音波処理油が受けている効果を知るためには, 性状の明確な油について, 周波数や照射強度を変えた実験が望まれるが, ここでは市販の重油を一定の装置で, 照射時間や照射時の油温を種々変化して処理したものがもつ違いを, ディーゼル機関における噴霧・燃焼特性に関連して調べ, 非照射油のそれと比較した.
適用した試験法は, 比重, 粘度および表面張力試験, 示差熱分析試験, ガスクロマトグラフィー試験, 遠心沈殿試験, スポット試験, 単一油粒の蒸発・燃焼試験, および実機試験などかなり広範囲にわたっているが, これらの試験の結果, つぎのことが明らかとなった.
超音波処理は, スラッジを多く含む油に対し, スラッジを極微状に粉砕・分散して, 油を均質化することにきわめて効果的である.また, この結果が僅少ながら液滴の蒸発・燃焼特性を助け, 機関の燃焼に影響を与える.しかし, 実験に使用した装置がもつ程度の超音波強度では, 油全体を本質的に改善することは困難である.