日本舶用機関学会誌
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旧海軍のエネルギー技術史を学ぶ
―渋谷文庫の完成を記念して―
石谷 清幹
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1996 年 31 巻 4 号 p. 211-218

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抄録
旧海軍は転換期である幕末に洋式海軍としてその前身が創出され, 明治になって本史に入り, 興隆し, 転換期である第二次大戦終結で消滅したから, その歴史には転換期の全局面が凝縮されている.この観点からの旧海軍史研究は, 現在進行中の空前の文明史的転換に対処する参考になる筈である.造機技術に注目すると, 旧海軍は世界的な大艦巨砲主義の影響下で, ボイラ, タービン, 内燃機関, 燃料燃焼, 製鉄鉄鋼, 工程管理などを, まるごと輸入からほぼ完全な自立にまで仕上げた.その技術は, 戦前戦中に海軍の直接影響下にあった設備と人材を継承した戦後の造船業, 鉄鋼業はもちろん, 電力産業や石油石炭産業などエネルギー産業, その機器製造業などにも流入している.
最近, 一般には滅失したとされている旧海軍造機技術資料中心の4209点の整理事業が完了し, 渋谷文庫が成立した.これを記念し, 古い史料を使って新観点から歴史を研究する意義と方法の考察に立脚し, 今後の研究領域例として次の3例をあげた.
(1) 技術発達の方向性 (2) 危機管理 (3) 技術の社会学
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