航海
Online ISSN : 2433-1198
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可変ピッチプロペラを装備した漁船によるサケ・マス流し網揚網中の翼角制御I : 各翼角による推進回数および推進継続時間の相互関係
西野 正見深田 耕一前田 弘宮下 民部内木 幸次関岡 幹尚
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1984 年 82 巻 p. 27-35

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抄録

可変ピッチプロペラとスラスターを装備した船尾トロール型の調査船を用いて,1982年4月12日から5月11日までにわたり,18回計2037反のサケ・マス流し網を揚網した際に行った翼角制御とスラスター使用の状況を分析し,次の結果を得た。1.計2037反を揚げるのに,1016分要し,この間に643回の前進,647回の停止と253回の後進,計1543回の翼角制御と155回のスラスター運転が行われた。2.前進の翼角は2°から10°まで主に3°から5°,後進の翼角は2°から10°まで主に5°と10°であった。3.前進・停止・後進の継続時間の頻度分布はいずれも対数正規型で,それらの平均は操業ごとに異なり,前進は16秒から38秒,停止は12秒から46秒まで,後進は2.5秒から33秒までであった。4.ほとんどの例の翼角と継続時間のオートおよびクロスコレログラムから,明瞭な周期性と連続性は見出せないことから,網が揚る速度は不均一で,それに応じて翼角と継続時間を不規則に変化させながら揚網しなければならなかったことが分る。5.1反を揚げるに要した時間・各翼角による推進回数およびその継続時間に関する20この変数を取り出し,主成分分析を行った結果,次のことが分った:翼角制御回数・翼角分布・継続時間・スラスター使用状況を変動させる最大の要因は,揚網操船を著しく困難にさせるような網の事故(棒捲き・もつれ・蛇行・大型魚の漁獲)の多少であった。向い風かどうかがこれに次いで大きな変動を起した。揚網中の前進で最も回数が多かった翼角3°の回数および揚網作業の基本的な変量である前進回数と停止時間はあまり大きな変動を示さず,しかもそれらの変動と他の変数の変動の間には類似性がほとんどみられなかった。6.網の事故の回数と程度は,操業ごとに異なり,一連の網に不規則に分布する。これが操業ごとに翼角制御状況とスラスター使用状況が異なり,翼角と継続時間に規則性が見られなかった原因であると考えられる。

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© 1984 公益社団法人 日本航海学会
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