情報システム学会誌
Online ISSN : 1884-2135
ISSN-L : 1884-2135
エンティティの存在従属分析のためのドメイン特化言語
井田 明男金田 重郎森本 悠介
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2019 年 15 巻 1 号 p. 1-17

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抄録

企業情報システムでは,システム相互の連携のために分散台帳技術やWebサービスAPIの採用が増すにつれて,業務で管理すべきエンティティをリソースとして可視化し,組織間で合意し,交換していくことの重要性が増してきている.具体的には,業務ドメインの概念モデルを適切に設計,維持しながら,それを元にデータベースを構築したり,構築したDBにアクセスするためのAPIを提供していくことが開発者にとっての重要な責務となっている.概念モデルは従来,ER図やUMLクラス図などを用いて表記されてきた.これらの図は,人間にとっては読みやすいが,図そのものは機械可読ではなく,モデリングツールを用いたとしても,図から生成できるものは,RDBのCreate Table文,Java等のプログラム言語のclass定義のスケルトンコードレベルに限られている上に,作図そのものも手間のかかる作業である.その上,エンティティの主キーと外部キーを人間が手作業で定義しなければ ならない.本来,主キーはオブジェクトidと同様,インスタンスを識別できる,業務の都合で決して変更されることのないものでなければならず,外部キーは参照先への関連の種類によって自動的に導かれるものである.このようなものを人間がいちいち定義し,モデルの可読性を低下させることはナンセンスである.その上,自然キーを誤って主キーに採用してしまうリスクも組み込まれる.そこで,本論文では,記述が容易で,人間,機械ともに可読な,存在従属分析結果の概念モデルを記述することに特化したドメイン固有言語(DSL)を提案する.提案DSLは,試実装したコンパイラで処理することで,ドメインモデルのデータベース定義とそれらにアクセスするためのAPI仕様を得ることができる.また,提案DSLでは,エンティティの属性に履歴管理を指定することができ,履歴管理にはドキュメント指向のデータベースを併用する.本論文では,提案DSLの構文と要素および意味論について説明し,7つの例題を取上げてその記述性について確認した.

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© 2019 一般社団法人 情報システム学会
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