抄録
壊死性軟部組織感染症は死亡率の高い疾患であり,早期の切開・排膿・デブリドマンと適切な抗菌薬投与が予後を改善させる。様々な起炎菌が報告されているが,これまでにCitrobacter koseriによる壊死性軟部組織感染症の報告はない。今回,我々はC. koseriによる壊死性軟部組織感染症の症例を経験したので報告する。症例は77歳の女性。既往歴として糖尿病,関節リウマチがあり,ステロイドを服用中であった。左前腕の疼痛,発赤,腫脹を主訴に来院し壊死性軟部組織感染症と診断された。直ちに切開・排膿・デブリドマンとpiperacillin/tazobactam,clindamycinによる治療を開始した。後に創部の培養からはC. koseriが検出された。生理食塩水による創部洗浄と抗菌薬投与により創部の状態は改善し,入院25日目には創部培養は陰性となった。その後も経過は良好であり,入院33日目,植皮目的にて整形外科に転科となった。C. koseriは弱毒性の腸内細菌であり,免疫抑制患者に感染を起こすことが多い。また,様々な抗菌薬に耐性を示すことが多く,抗菌薬は抗緑膿菌作用を持つペニシリンが第一選択薬とされる。本症例のように糖尿病,ステロイド投与といった免疫抑制患者における壊死性軟部組織感染症では,起炎菌としてCitrobacter属などのグラム陰性桿菌も考慮した抗菌薬選択が重要である。