日本救急医学会雑誌
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症例報告
脳出血治療中に意識レベルの悪化を契機として発見された高カルシウム血症クリーゼの1例
菊池 忠今村 浩望月 勝徳北村 真友岩下 具美堂籠 博岡元 和文
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2009 年 20 巻 12 号 p. 935-940

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抄録

症例は73歳の女性,突然の意識障害にて某医に救急搬送され,右小脳出血および閉塞性水頭症の診断にて穿頭血腫除去術を受けた。その後意識レベルは回復したが,数日後より再び低下した。頭部CTおよびMRIにて意識障害の原因となる病変を特定できなかった。その後ショック状態を呈したため当院へ紹介となった。血液検査にて,腎機能障害,肝機能障害,高ナトリウム血症および著明な高カルシウム血症を認めた。直ちに大量輸液を開始し,次いでフロセミドおよびカルシトニンの投与を開始した。血清カルシウム値が低下するにつれ,意識レベルは徐々に改善した。本症例の高カルシウム血症クリーゼは副甲状腺腫による副甲状腺機能亢進症が主因と考えられた。口渇が生じると通常は飲水する。しかし,本症例は小脳出血に伴う意識障害が存在していたため飲水することができず,さらに脱水が進行し著しい高カルシウム血症を呈したと考えられた。脳卒中患者などが説明できない意識障害を呈した場合には,その一因として高カルシウム血症を考慮する必要がある。

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© 2009 日本救急医学会
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