日本救急医学会雑誌
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原著論文
目撃のある気道異物による窒息症例50例の検討
河原 弥生木下 浩作向山 剛生千葉 宣孝多田 勝重守谷 俊丹正 勝久
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2009 年 20 巻 9 号 p. 755-762

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抄録

【背景】本邦における異物による気道閉塞患者に対する現場処置の実態は不明である。本研究では,当院に搬送された目撃のある気道異物患者に対する初期対応の実態から,転帰改善になにが必要かを明らかにする。【方法】2003年 1 月から2006年12月までに当救命救急センターに搬送された,目撃のある気道異物による窒息症例50例を対象にした。患者搬送時に目撃者および救急隊から異物内容と現場での処置を聴取し,1)年齢,2)性別,3)反応消失後の異物除去行為の有無,4)bystander cardiopulmonary resuscitation(CPR)の有無,5)覚知から救急隊現場到着までの時間,6)覚知から患者の病院到着までの時間,7)気道閉塞の原因が大きな一塊の異物片か否か,8)普段の食事介助が必要か否かと転帰との関連について検索した。【結果】全症例,救急隊到着時には傷病者の反応は消失していた。反応消失までに,目撃者によるHeimlich法などの異物除去が施行された症例は存在しなかった。反応消失後は,気道異物の除去のみを施行している症例が50%であり,38%が119番通報のみであった。反応消失後にCPRを行った症例は12%であった。最終転帰(退院もしくは転院時)は,死亡34例(死亡群),生存16例(生存群)であった。両群間で生存退院に対して,統計学的有意であったのは,119番通報から患者の病院到着までの時間だけであった。【結論】気道異物による反応消失前にHeimlich法などの異物除去の処置が施行された症例は存在しなかった。反応消失後にCPRを行った症例はわずか12%であった。一次救命処置に関する講習会が各地で頻回に行われているが,生命を脅かす病態に対する対処法が一般救助者や介護施設のヘルスケアプロバイダーに普及していない可能性がある。今後,一次救命処置における気道閉塞患者など生命を脅かす病態に対する救急処置法の講習が普及しているかどうかの実態調査と更なる救急処置法の普及活動が必要である。

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© 2009 日本救急医学会
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