日本救急医学会雑誌
Online ISSN : 1883-3772
Print ISSN : 0915-924X
ISSN-L : 0915-924X
原著論文
ダメージコントロール手術における一時的閉腹法としてのvacuum packing closure(VPC)法-VPC法は他の一時的閉腹法より優れているか?-
渡部 広明井戸口 孝二西内 辰也石川 和男水島 靖明松岡 哲也
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 21 巻 10 号 p. 835-842

詳細
抄録

背景・目的:重症多発外傷患者におけるダメージコントロール手術(DCS)の際には,迅速な閉腹とその後に発生しうる腹部コンパートメント症候群(ACS)を予防することが重要である。当センターでは1994年の開設早期からDCSの概念を導入実践し,一時的閉腹法としてはvacuum packing closure法(VPC法)を積極的に行い,その利点を報告してきた。今回,VPC法と本法導入前の従来法(皮膚縫合またはsilo closure法)との比較検討を行い,VPCの有用性について検討した。方法:対象は1994年以降に当センターでDCSが行われた外傷患者87例である。一時的閉腹法をVPC法と従来法に大別し,それぞれの手術時間,総輸液量,術後ACS発症の有無および予後等を比較検討した。結果:従来法は29症例(33回)に,VPC法は58症例(101回)に行われていた。年齢,性差,ISSなどの背景因子には両群間で有意な差はみられなかった。両群間の手術時間,総出血量および手術終了までの総輸液量を比較したが有意差を認めなかった。初回手術後にACSを発症したものは,従来法で7例(24.1%)であったのに対し,VPC法では1例(1.7%)のみであった。両群間の総輸液量に差がなかったことから,VPC法は従来法に比して術後ACSを防止していることが示された。更に救命率を比較すると従来法で37.9%,VPC法で51.7%と従来法と比して遜色ない予後が得られた。結語:VPC法は,迅速な閉腹を実現すると同時にACSを予防し,DCS時のすぐれた一時的閉腹法と考えられる。

著者関連情報
© 2010 日本救急医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top