抄録
鋭的椎骨動脈損傷に対して椎骨動脈塞栓術を行い救命し得た1例を経験した。症例は39歳の男性,自損による左頸部刺創にて当院へ搬送された。来院時は頸部より活動性出血を認めなかったが,CT検査中に大量出血を認めた。出血部位を検索するとC5椎骨横突起周囲から拍動性出血を認め,直視下で止血が困難であった。椎骨動脈損傷が疑われたため,緊急血管造影検査にて左椎骨動脈損傷を確認し,近位側に対し動脈塞栓術を行い止血した。一般にZone II領域の頸部鋭的損傷では,手術の必要性の判断に身体所見が有用である。しかし鋭的椎骨動脈損傷は解剖学的な理由から,身体所見のみでは手術の必要性の判断が困難な症例も存在する。椎骨動脈近傍に達する鋭的損傷では,画像検査による椎骨動脈損傷の検索が必要である。