日本救急医学会雑誌
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症例報告
外傷による出血性ショックを契機に発症した非閉塞性腸管虚血症の1例
橘高 弘忠加藤 雅也喜多村 泰博福田 真樹子西原 功大石 泰男秋元 寛
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2010 年 21 巻 6 号 p. 319-325

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抄録
非閉塞性腸管虚血症(nonocclusive mesenteric ischemia; NOMI)は,低心拍出状態や循環血液量減少などに伴って発生する予後不良の疾患とされている。我々は外傷による出血性ショックが原因となったNOMIの1例を経験したので文献的考察を加え報告する。症例は71歳,男性。深さ250 cmで水道管工事中に土砂が崩れ,水道管の間に挟まれ受傷し当センター搬入となった。搬入時,収縮期血圧は触診で60mmHg,脈拍72 bpmとショック状態で,骨盤X線写真で不安定型骨盤骨折を認めた。初期輸液療法にて血圧安定したため腹部造影CT,逆行性尿道造影を施行したところ,不安定型骨盤骨折による後腹膜出血,尿道損傷,腹腔内膀胱破裂と診断した。検査終了時より再び血圧低下したため,緊急開腹術を施行した。膀胱瘻造設術,膀胱修復術,後腹膜ガーゼパッキング術を施行しvacuum packing closure(VPC)にて減圧閉腹した。アシドーシス,凝固障害の改善後,第3病日にパッキング除去術を施行したが,この時回腸の虚血性変化を認めた。虚血性変化が非可逆的なものか不明であり切除範囲の決定が困難であったこと,後腹膜血腫が残存しており引き続きVPCが必要であったことから,この段階では切除は行わず,plastic bag越しに腸管の色調をフォローすることとした。その後,腸管の虚血が進行したため,第5病日に手術を施行した。回腸に非連続性の虚血・壊死を認めNOMIと診断し,回腸・盲腸切除術,機能的端々吻合を行い腹壁を縫合閉鎖した。その後,腹壁創し開やMethicillin-resistant Staphyrococcus aureus感染などの合併症を来したが徐々に全身状態改善し,第76病日リハビリテーション目的に転院となった。外傷に起因するNOMIの診断は困難であるが,VPCに用いたplastic bag越しに腸管の色調を観察することで,的確な診断・治療を行うことが可能であった。
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© 2010 日本救急医学会
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