日本救急医学会雑誌
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原著論文
救命救急センターでの早期経腸栄養患者に対する血糖管理における低糖質高脂肪栄養剤の有用性
毛利 智好松田 宏樹久保 範明稲留 直樹中森 靖藤見 聡吉岡 敏治
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2011 年 22 巻 12 号 p. 871-877

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抄録

【背景】重症患者に対する栄養管理として入院早期からの経腸栄養が推奨される。また,重症患者における高血糖は予後や合併症に影響を及ぼすことはよく知られている。当科では血糖変動を起こしにくい低糖質高脂肪栄養剤が重症患者の血糖管理に有効であると考え,2010年4月から導入した。【目的】人工呼吸管理を要した重症患者に対する低糖質高脂肪栄養剤による経腸栄養開始後の血糖管理の有用性を,標準濃厚流動食と比較・検討し明らかにすること。【方法と対象】2009年4月から2010年3月までに当科に入院し標準濃厚流動食を投与した重症患者74例(S群)と,2010年4月から2011年3月までに入院し低糖質高脂肪栄養剤を投与した重症患者73例(G群)の経腸栄養開始後の最高血糖値およびインスリン導入率を比較した。経腸栄養は入院7日以内に時間あたり20mLの少量持続投与から開始し,その後速やかに数日で目標カロリーに達するまで増量した。【結果】両群における入院時の年齢・性別・傷病内訳・経腸栄養開始時血糖値に有意差はなかった。最高血糖値は,S群163±32.0mg/dlに対してG群151±28.4mg/dlと有意差を認めた(p=0.022)。また,経腸栄養開始後のインスリン導入率はS群74例中9例(12.2%)に対し,G群73例中1例(1.37%)と有意差を認めた(p=0.018)。両群における28日生存率,ICU入院日数および経腸栄養開始後の消化器症状合併率には有意差を認めなかった。【結語】低糖質高脂肪栄養剤は標準濃厚流動食に比べ,重症患者の急性期における経腸栄養開始後の血糖管理に優れた栄養剤である。

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