日本救急医学会雑誌
Online ISSN : 1883-3772
Print ISSN : 0915-924X
ISSN-L : 0915-924X
症例報告
心肺蘇生後偶発性低体温を緩徐に復温した溺水蘇生後脳症小児の1例
興梠 健作矢野 隆郎山内 弘一郎河野 太郎竹智 義臣恒吉 勇男
著者情報
キーワード: 蘇生後脳症, 小児
ジャーナル フリー

2012 年 23 巻 4 号 p. 175-181

詳細
抄録

近年小児領域でも,蘇生後脳症に対する脳低温療法が注目されているが,目標温度や維持期間等の冷却方法に関して,未だに一定の見解は得られていない。今回心肺蘇生後偶発性低体温症を合併した,溺水蘇生後脳症の6歳の男児に対し,脳温34℃から復温を緩徐に行った。患児の最大予測心肺停止時間は30分で,心拍再開6分後に自発呼吸が出現し,40分後に対光反射を認めた。来院時直腸温は31℃,ICU入室前に33.9℃まで復温したが,以後は前額深部温度を脳温としてモニターし,水冷式ブランケットを使用して11日かけて34℃から36℃台に復温した。18日後に人工呼吸器から離脱し,6か月後には自力で経口摂取,歩行,単語の発語が可能となった。本症例は,偶発性低体温症となった溺水蘇生後脳症の小児症例であり,長期神経学的予後の面から,34℃からの緩徐な復温を用いた体温管理が有効であった可能性がある。

著者関連情報
© 2012 日本救急医学会
前の記事
feedback
Top