日本救急医学会雑誌
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症例報告
スーパー母体救命搬送システムにて搬送された妊娠関連脳血管障害の1例-母体救命搬送の現状と急性期管理について-
小田 紘子水主川 純山口 玲木村 昭夫
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2012 年 23 巻 7 号 p. 309-314

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抄録
妊産婦の救急体制は社会問題とされており,東京都は2009年に新たな周産期救急体制を導入した。スーパー母体救命搬送システムという名のこの救急体制は,東京消防庁を通し,救命処置を要する妊産婦が早急に診療を受けられるようにするシステムである。今回,このシステムを通じて当院へ搬送された妊婦脳出血の1例を呈示し,母体救命搬送の現状と妊娠関連脳血管障害の急性期管理について考察する。症例は29歳の女性,妊娠39週。既往はとくになし。妊娠経過は順調であった。深夜,突然に頭痛,左半身麻痺を認めたため救急要請し,当院へ母体救命搬送依頼があった。来院時Glasgow coma scale E2V4M6,左半身麻痺を認め,頭部CTにて右被殻出血と診断された。その後意識レベルが急激に低下し,児の状態も悪化したため,緊急帝王切開・減圧開頭術施行となった。母体は片側型もやもや病と診断され,遷延性意識障害が残存した状態で転院となり,児は障害なく自宅退院となった。スーパー母体救命搬送システムの搬送事案において,脳血管障害は非産科的疾患のなかで最多であった。妊娠関連脳血管障害は産科救急で高頻度にみられ,致死率は高い。しかし,その急性期診療指針は未だ確立されておらず,救命には多くの医療者の柔軟で迅速な対応が求められる。初期診療においては,早期に確実な気道確保および呼吸管理を行うことが重要であり,血圧は140-160/90-100mmHg程度に管理されることが望ましい。産科救急症例は加療中常に児への影響を考慮する必要があるが,児の状態をモニタリングしながら行うことでより安全な管理が可能であると考える。確実な診療には関連診療科間で産科救急疾患の知識を共有し,緊急時の診療方針を決めておくことなど診療体制の整備が重要である。産科救急は救急科・周産期科の連携のみならず,病院全体の理解と協力を得ることが大切であると考える。
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© 2012 日本救急医学会
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