抄録
1例目は47歳の女性。糖尿病の既往あり。8か月前より左背部痛が出現し歩行困難となったため前医に救急搬送され,左後腹膜腔から股関節周囲にかけて多量のガス像を認め同日当院に転院となった。来院時は脈拍数120/分,血圧102/64mmHg,体温36.0℃であった。下行結腸の穿孔による後腹膜膿瘍と直接進展による化膿性股関節炎のため開放ドレナージ術と人工肛門造設術を行った。後腹膜腔の感染がコントロールされた第78病日に左臼蓋と大腿骨頭の骨髄炎に対して臼蓋掻爬および大腿骨頭離断術を施行し,最終的に装具・杖歩行下に転院となった。2例目は52歳の男性。特記すべき既往歴なし。1か月前より右腰痛あり前医より紹介となった。来院時は脈拍数124/分,血圧124/74mmHg,体温36.7℃であった。上行結腸の憩室穿孔によると思われる続発性腸腰筋膿瘍に対して適宜開放ドレナージ術を施行したが,右化膿性股関節炎・骨髄炎を合併し,第108病日に臼蓋掻爬および大腿骨頭離断術を施行し軽快,最終的に装具・杖歩行下に退院となった。大腸穿孔による後腹膜膿瘍に化膿性股関節炎・骨髄炎を合併し,治療に難渋した2例を経験した。消化管穿孔に伴う後腹膜膿瘍で腸腰筋を主な進展経路とする場合には,化膿性股関節炎・骨髄炎の合併に留意する必要があると思われた。