日本救急医学会雑誌
Online ISSN : 1883-3772
Print ISSN : 0915-924X
ISSN-L : 0915-924X
症例報告
新型インフルエンザウイルス感染による横紋筋融解症によって急性腎傷害を生じた高齢者の1例
松吉 健夫岡田 保誠稲川 博司小島 直樹山口 和将佐々木 庸郎
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 24 巻 9 号 p. 781-786

詳細
抄録

新型インフルエンザウイルス感染による横紋筋融解症によって,急性腎傷害を生じた高齢者の1例を経験したので報告する。症例は,統合失調症により精神科病院に長期入院中の75歳の男性である。前医で発熱を契機にインフルエンザウイルス感染と診断され,翌日の検査にて横紋筋融解症,急性腎傷害を認めたため当院救命救急センターに搬送された。ICUに入室し治療を開始したが,大量輸液,利尿促進に反応せず,第2病日に血液透析を施行した。その後34日間に計18回の血液透析により腎機能は回復し,第52病日に前医へ転院となった。従来のインフルエンザウイルス感染により横紋筋融解症,急性腎傷害に至った症例は,これまでにも散発的に報告されている。一方で,A/H1N1 pdm(新型インフルエンザウイルス)による報告はほとんどない。A/H1N1 pdmでは急性呼吸窮迫症候群を含む多臓器不全の症例報告が散見されるが,本症例のように横紋筋融解症から急性腎傷害を単独で呈する場合もあり注意を要する。

著者関連情報
© 2013 日本救急医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top