日本救急医学会雑誌
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症例報告
少量の心嚢ドレナージが有効であったStanford A型急性大動脈解離に合併した心タンポナーデの一救命例
藤井 公一宮武 諭石山 正也大木 基通冨岡 秀人加瀬 建一小林 健二
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2014 年 25 巻 10 号 p. 792-796

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抄録

症例は70歳の男性。自宅で突然の胸背部痛を訴えた後,当院に救急搬送された。来院時,意識JCS 300,脈拍数49/分,血圧96/80mmHgであった。緊急で施行した心エコー検査にて心嚢液貯留を認めたためStanford A型急性大動脈解離(以下A型解離)による心タンポナーデの可能性が疑われた。気管挿管後に,患者は心肺停止したため心肺蘇生を開始し,2分後に自己心拍は再開した。しかし循環動態が不安定となったため心嚢穿刺を施行した。約10mLの血性心嚢液を吸引した後は,速やかに血圧が上昇し,その後循環動態は安定した。造影CT検査の結果,A型解離と診断が確定し,緊急手術(上行-弓部部分置換術)が施行された。第22病日にICUを退出したが,誤嚥性肺炎を併発し,第177病日に永眠された。A型解離に合併した心タンポナーデに対する心嚢穿刺は,手術待機の間に循環が維持できない場合には考慮すべきと考えられた。その際は,ドレナージ量を最小限にして,血圧を過度に上昇させないことが重要であると考えられる。

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© 2014 日本救急医学会
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