2014 年 25 巻 9 号 p. 734-738
上部消化管内視鏡検査中に緊張性気腹から心肺停止(cardiopulmonary arrest: CPA)に陥ったが,迅速な減圧により救命できた症例を経験した。症例は63歳の男性。心窩部痛のため前医を受診した。前医で上部消化管内視鏡検査中にCPAとなり,心肺蘇生を行いながら搬入された。頸静脈怒張と著明な腹部膨満を認めた。上部消化管内視鏡検査中に生じた緊張性気腹と診断し,tube drainageを行った。腹部は平坦となり,心拍が再開し,大網充填術を行った。術後,集中治療を要したが,後遺症なく退院となった。緊張性気腹は非常に稀な病態で報告は少ない。緊急性が高いことと,減圧により病態を改善させることが可能であることを認識する必要がある。またCPAであっても,的確な一次救命救急処置(basic life support: BLS)と迅速な診断,迅速な減圧により予後良好な転帰が得られる。