日本救急医学会雑誌
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海洋動物の毒
塩見 一雄
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1999 年 10 巻 1 号 p. 4-27

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抄録

本論文では海洋動物に含まれる多種多様な毒成分を概説する。マリントキシンの多くは,食品衛生および公衆衛生の点で人間生活と深く関わっている。食中毒を引き起こす毒はすべて低分子化合物で,フグ毒(テトロドトキシンおよびその関連毒),シガテラ毒(シガトキシン類およびマイトトキシン),ナガズカの卵巣毒(ジノグネリン),コイの胆汁毒(5α-キプリノール硫酸エステル),クルペオトキシン(パリトキシン),麻痺性貝毒(サキシトキシンおよびその関連毒),下痢性貝毒(オカダ酸,ジノフィシストキシン類,ペクテノトキシン類,イェソトキシン),記憶喪失性貝毒(ドウモイ酸),バイ毒(ネオスルガトキシン,プロスルガトキシン),エゾバイ科巻貝の唾液腺毒(テトラミン)およびアワビの中腸腺毒(ピロフェオホルバイドa)があげられる。麻痺性貝毒および下痢性貝毒は,毒化二枚貝が出荷停止措置を受けるので水産経済上の問題も大きい。魚類,ウニ類などの毒棘,イモガイの毒球,毒腺,矢舌および吻,刺胞動物の刺胞といった特殊な毒器官にはタンパク毒またはペプチド毒が含まれ,毒器官に刺されたときには危険で致命的ですらある。イモガイのペプチド性神経毒(コノトキシン類,コナントキン類)およびイソギンチャクのペプチド性神経毒の性状は詳しく調べられているが,タンパク毒,とくに魚類とクラゲ類のタンパク毒は非常に不安定でその性状は不明な点が多い。以上に述べた毒の他にも,ハコフグのパフトキシン類(コリンエステル),ヌノサラシ科魚類のグラミスチン(ペプチド)といった魚類体表粘液毒,魚類血清毒(タンパク質),シジミ毒(タンパク質),アクキガイ科巻貝の鰓下腺毒(コリンエステル),イソメ毒(ネライストキシン)といった興味深い毒成分もある。一部マリントキシンは人間生活にとっても有用であることを強調しておきたい。ネライストキシンは農薬開発のモデル化合物となったし,テトロドトキシン,サキシトキシン,イモガイ毒,イソギンチャク毒などは貴重なイオンチャンネル試薬として広く活用されている。

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