日本救急医学会雑誌
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急性心筋梗塞症例に対する救急車搬送の利点と予後
松井 幹之伊藤 誠廣野 摂福井 昭男久保田 功横山 紘一友池 仁暢
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2003 年 14 巻 9 号 p. 440-447

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抄録

平成5年4月から平成12年12月までに山形県急性心筋梗塞・突然死発症登録事業に登録された急性心筋梗塞症例のデータをもとに,急性心筋梗塞発症時の救急車搬送(救急車群)の利点と予後について救急車を利用せずに受診した症例(非救急車群)と対比して検討した。発症から24時間以内に受診した急性心筋梗塞2,448症例のうち61%の症例が救急車を利用していた。救急車群では,胸痛(87% vs 90%),梗塞前狭心症(36% vs 41%)を有する症例が少なく,意識障害を伴う症例(11% vs 5%), Killip分類IV型(16% vs 8%),心電図上Q波梗塞(75% vs 68%)は多かった。救急車群では高率に再灌流療法が施行されていた(65% vs 56%)が,急性期死亡率は救急車群で高率(19% vs 12%)であり,その原因として救急車群により重症の症例が多く含まれているためと考えられた。来院時Killip IV型に限って検討したが,救急車群と非救急車群の急性期死亡率に差を認めなかった。一方,救急車群で入院後,早期の死亡例が多く認められた。Killip IV型症例でもより重症例が救急車搬送されているため,救急車群での急性期死亡率改善がみられないと考えられた。救急車搬送される重症心筋梗塞症例に対する治療体制の再検討が必要と考えられた。

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