日本救急医学会雑誌
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Symmetrical Peripheral Gangreneを来したToxic Shock Like Syndromeの1例
八木 正晴黒木 啓之三原 結子森脇 寛田中 啓司新藤 正輝有賀 徹
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2005 年 16 巻 3 号 p. 121-125

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抄録

症例:57歳の女性。発熱,下痢,嘔吐を主訴に近医を受診し,補液などの治療を受けたが症状が改善しないため,紹介にて当院救急外来を受診した。来院時意識障害,発熱,項部硬直を認め,両下腿に紫斑を認めた。原因不明の感染症として入院し,第3病日両手指・足趾・足底に壊死が出現した。入院時の血液検体中からA群β溶連菌が検出されたことにより,toxic shock like syndromeの診断が強く疑われ,救急医学科へ転科となった。壊死部を切開しても,筋膜壊死や感染徴候を認めないことから,敗血症により,播種性血管内凝固(DIC)を生じ,symmetrical peripheral gangrene (SPG)となっていることが考えられた。敗血症に対し,ABPC 8g/dayとγ-グログリン投与,抗DIC療法(低分子ヘパリン,AT製剤,FFP)を行った。第6病日にはDICは改善し,第94病日に両手指(左第1指を除く)と両下腿の切断術を施行し,義足にてリハビリテーション後退院となった。考察:SPGとはDICによって生じた微小塞栓が微小循環を閉塞させるなどして末梢組織の壊死を起こすもので,敗血症によるものが多い。SPGとなる例は非常にまれであり,その発生には,基礎疾患(Raynaud's syndrome,動脈硬化,糖尿病など)の存在の他にスーパー抗原の関与が示唆されている。本症例では,ステロイド投与中であったこと以外には基礎疾患はなく,感染源も不明であった。

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