日本救急医学会雑誌
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脳塞栓急性期症例に対する塞栓破壊・ウロキナーゼ動注療法の治療成績の検討
原田 薫雄藤岡 敬己浜崎 理
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1997 年 8 巻 9 号 p. 376-383

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抄録

脳塞栓の急性期症例に対し塞栓破壊・ウロキナーゼ動注療法を施行した。対象は発症より6時間以内に来院し,CTにて明らかな梗塞巣が認められず,脳血管撮影にて主幹脳動脈に閉塞が認められた脳塞栓の急性期症例22例(35~82歳,平均71.4歳,男性/女性:15/7)である。発症から治療開始までの平均時間は3.5時間で,心電図上,心房細動が20例にみられた。閉塞血管は内頸動脈3例,中大脳動脈17例,椎骨脳底動脈2例であった。全例に塞栓破壊・ウロキナーゼ動注療法を施行し,ウロキナーゼを平均43.2万単位動注した。その結果,脳血管撮影上,完全開通が1例(4.5%),部分開通が13例(59.1%),未開通が8例(36.4%)であり,臨床症状の改善は8例(36.4%)でみられた。治療開始までの時間と臨床症状の改善率の関係について検討した結果,発症から3時間以内に治療を施行し得た症例では13例中7例(53.8%)で臨床症状が改善したのに対し,3時間以上経過した症例では臨床症状が改善した症例は認められなかった。また,臨床症状の改善率について再開通の有無との関連について検討した結果,再開通が認められた症例では13例中5例(38.5%)で臨床症状が改善したのに対し,再開通が認められなかった症例では8例中1例(12.5%)で改善したに過ぎなかった。側副血行路の発達の程度と臨床症状の改善率について検討した結果,側副血行路の発達が良好な症例では,臨床症状の改善率が高い傾向がみられた。術中合併症について検討した結果,3例(13.6%)において血管破裂,血管攣縮,血管解離が認められた。以上より急性期脳塞栓症例においては,専門施設への迅速な搬入による早急な治療の開始および積極的な塞栓破壊による初期治療がきわめて重要であると考えられた。

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