抄録
筆者らはこれまで,60歳定年退職を前提とした生涯賃金モデルを作成し,非消費支出・可処分所得の
試算,iDeCoの税軽減効果の検証などを行いながら教材開発を進めてきたが,iDeCoの加入年齢が60歳
未満から65歳未満に拡大されたことなどを受けて,65歳定年退職を前提とした生涯賃金モデルへと更新
した。2023年の統計データに基づく試算の結果,大卒の生涯賃金は,男性約2憶9156万円,女性約2憶
3496万円となり,生涯賃金に占める非消費支出の割合は,男性25.2%,女性23.2%であった。入職時か
ら65歳未満まで毎月iDeCoに23,000円拠出した場合,積立元金合計額は男女ともに同額の1179万9000円
で,拠出に伴う税軽減効果は,男性283万2450円,女性229万4250円であった。また,男女別生涯賃金
モデルを組み合わせて家族構成を組み込んだ結果を用いて,児童手当の拡充と扶養控除の縮小の効果に
ついて試算したところ可処分所得が5万4000円増えるという結果であった。