抄録
本稿では,我が国における金融経済教育の現状について概観するとともに,筆者による小学校での金融経済教育実践に基づく授業計画を提案し,金融経済教育のあるべき方向性について検討した。地方銀行に勤務する箪者は,文部科学省主催「消喪者教育フェスタinぎふ」(会場:岐阜市立長良東小学校)で,「お金はじょうずに使おう」をテーマに6年生を対象としたデモ授業を行った。これに際し,子どもたちとの対話を通じて,「お金の役割」や「お金を得るには労働が必要なこと」,「お金のじょうずな使い方」,「幸せに暮らすためにはお金が必要だが,それ自体が一番大切なものではないこと」などを児童自身が考えながら学習する授業計画を立案した。授業後のアンケート内容から,授業内容は概ね理解されており,子どもたちは単なる知識としてではなく,自分自身の問題として真剣にこれからのお金の使い方を考えている様子がみられた。授業実践を通じて,数時間に及ぶ授業計画ではなく,1時限(45分)のみの授業であっても工夫次第で,子どもたちが金融経済に興味を持つきっかけとなる授業計画が十分可能であることが確認できた。学校の教育現場における金融経済教育を教員のみが担うのではなく,金融経済分野で専門性を有する地域金融機関等による協力を得ることは,子どもたちの金融リテラシーを高めるために有効な手法である。