競争原理導入が急速に進む国際通信分野では、企業連携が市場での優位性を高める重要な企業行動として位置付けられつつある。しかし近年の国際通信分野での企業連携の構成は流動的であり、既存事業者、新規参入者による市場占有率の変化も著しい。その背景には今日の企業連携がもたらしえるさまざまな経済効果は認識されつつも、それらの効果の創出・維持・強化に向けた実際の連携行動に国際通信事業であるがゆえに起因する多様性が要求されるということがある。したがって今後の市場動向や規制政策に関する議論には、これらの経済効果と国際通信の市場占有過程との関係を示すメカニズムのフレームワークを整備しておくことが課題になる。
本論ではこのような問題意識のもと、国際通信事業における今日の企業連携を中心とした企業行動が創出可能である主要な経済効果を捉え、これらの効果を維持・強化できる要因を考察する。その上で企業連携による複数の経済効果、サービスの多様さ、利用者数の変化に寄与する供給側と需要側の複数の効用が循環しながら、これらの経済効果の維持・強化を補完する関係にあることを示す。そして今後の国際通信市場における占有過程の振舞いに大きな影響を継続して与えるメカニズムのフレームワークとしてこの相互補完関係を提示する。