セットメーカーが低収益構造から脱却するためには,組み立てに徹するのではなく,デバイス事業への進出が求められるようになってきている.我々は,社内にセット事業が存在することがデバイス事業の成功に結びつくメカニズムを探索する目的で,二次電池業界での比較事例分析およびディスプレイ業界での追試を実施した.
先行研究からは,既存企業が追随することができないような既存技術から飛躍した新技術を適用すべきことが示唆されており,セットメーカーがデバイス事業に進出するためには,このような技術を開発しなければならない.しかし,不確実性が高いため,開発を意思決定することは容易ではない.我々は,セット事業との相乗効果が,開発投資の「期待値」を増幅させる効果があり,この効果によって不確実性の高い技術開発が正当化される可能性があることを示した.さらには,この効果を生じさせるために必要な内部・外部の環境条件を仮説的に提示した.