経営情報学会誌
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論文
被災からの生き残り経営における「語り」という言語行為の戦略性―現場事例研究への生命論的アプローチ―
増田 靖
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2014 年 23 巻 3 号 p. 193-215

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抄録

本稿は,市場での熾烈な生き残りを賭けた経営のみでなく,近年頻発する大災害等の不測の事態に備えた生き残りを志向した経営を実践している中小企業の戦略的経営の特質を,日常の「語り」という言語行為の枠組みで読み取っていくことを目的とする.3.11の大震災に被災しながらも,BCPを発動させ,短期間にほぼ被災前の操業に近い状態に回復し,顧客のニーズに応えられただけでなく,地域の復旧にも貢献した二つの企業を事例として取り上げる.分析には,「語り」という言語行為を定式化した現場調査理論である「語り」論を用いる.その際「語り継ぎ」の概念を中心に議論する.また「語り」論が定位する「生命論的アプローチ」による組織論からの考察を通して,この「語り継ぎ」の概念が中小企業の被災からの生き残り経営にとって重要な役割を演じる日常的言語行為であることを示唆する.

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© 2014 一般社団法人 経営情報学会
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