産業のネットワーク化と産業構造変化

抄録

本論では，消費の側から生産に向けてのネットワーク化の進展が産業構造に及ぼす影響を産業のネットワーク化の一つのシナリオを検討することで分析する。我々は，工業製品の製造を，何らかの機能を呆たす商品のデザインの物理的実現と考える。このときその商品の機能オブジェクトとしてのデザインから，その部品(部分機能オブジェクト)の生産，全体の組立，検査，完成，更に消費という一連の流れが消費者主導型で進むような分散型のネットワーク的産業構造のシナリオを検討する。その際に現実にニーズ指向の分散型生産システムを産業領域で実現させているネットワーク型組織や中小企業の高度工業集積，更に情報ネットワーク上でユーザを含む分散的なソフトの開発，評価，改良のシステムを実現させているインターネット上のソフト産業を例に取りながら，新しい産業構造に関するシナリオの粗描を試みる。