2026 年 35 巻 1 号 p. 1-17
従業員が課や部門などの所属グループを越えて効果的に知識共有するメカニズムを解明することは現代の重要な研究課題である.しかし,専門知識の効率的な活用を支えるメカニズムであるトランザクティブ・メモリー・システム(TMS)は,主にグループ内を対象に研究されており,グループ外の働きについては十分に解明されていない.本研究では,従業員がグループ外で知識共有するTMSを「グループ外TMS」と定義し,グループ外TMSに影響を与える要因に関する分析を行った.その結果,社内ソーシャルメディアの利用がグループ外TMSを促進し,集権化の知覚は抑制要因となることが示された.さらに,不確実性が高い状況では,グループ内TMSが高いほどグループ外TMSが抑制される傾向が示された.本研究は,グループ内外のTMSの特徴を考察し,TMS理論の適用範囲を拡張するための理論的貢献を提示する.