1999 年 8 巻 2 号 p. 79-98
ビジネスプロセスの分析・モデリング手法として期待が寄せられているIDEF0は、ソフトウェア開発プロセスを扱うための手法としての側面ももつ。しかし、実際のソフトウェア開発に適用した事例の報告は少ない。本論文では、ビジネスアプリケーションの中でも開発難易度が高く、試行錯誤的な開発が行われているスケジューリングシステムをとりあげて、IDEF0を用いたソフトウェア開発プロセスの分析について述べる。分析では、開発者のみならず、利用者、運用者も参加し、過去に行われた4つの開発事例の現状をそれぞれAS-ISモデルとして記述する。そして、各AS-ISモデルの比較をもとにプロセス改善の方向性をTO-BEモデルとして記述する。その結果、(1)作成したモデルを共通の基盤として、プロセスの特性と改善の方向性を三者間で議論することが可能となり、また、モデルの作成過程を通して、従来、決して良好ではなかった三者間のコミュニケーションの改善が図られる、(2)(1)の効果を得るためには記述性、可読性、実施性の点からIDEF0適用上の留意点を十分理解しておくことが必要であるとの知見を得た。これらは、今後、ソフトウェア開発プロセスの分析にIDEF0を適用する際の指針になりうる。