日本造船学会論文集
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高次船型の造波機構
乾 崇夫梶谷 尚福谷 直通山口 真裕
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1968 年 1968 巻 124 号 p. 9-18

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抄録

船型を造波特性によつて分類すれば, 単純船型と高次船型 (複雑船型) とにわけることができる。例を前半部船体にとると, 単純船型とは, 船首から中央断面までの各点から発生している後続自由波が, 加算的に合成された結果, 全体として単一のケルビン波を形成するような船型である。反対に高次船型とは, それら自由波が減算的に打消しあつて, 振幅が小さく, かつその位相が非常に複雑な波紋を形成する船型である。
ともに後続自由波相互間の造波干渉の所産でありながら, なにがゆえに, 一方は加算的, 他方は減算的と, まつたく相反する結果をもたらすのであるか?その理由については後述するとして, 両船型の波が実際にどのようにちがうのか?この差を定性的かつマクロ的にみるには波紋写真 (1) で十分であろう。もしさらに, 一歩深く堀り下げて, 定量的・ミクロ的にしらべるのであれば, 上例の場合, 船首波を構成する素成波成分の重率振幅関数SF* (θ), CF* (θ) をその伝播方向θベースにプロットするとよい。前者がθ=0でかなり大きな値からスタートし, θの増加とともに単調にゼロに収斂してゆくのに反して, 後者は, 全体としての振幅が小さく, しかも, |θ|=0~π/2の変域で2度, 3度とベース・ラインを横断し, その符号は, 正から負, 負から正へと, めまぐるしく変化している。
以下の報告は, 上述2種の船型グループのうち, 高速ライナーをはじめ, 各種の船型計画への応用上, とくに重要視される高次船型を対象とし, 理論と実験とのあいだに, いまなお実存するgapがどの程度のものであるか?またそのgapはどのような原因に由来すると考えられるか?その原因を排除する手段はなにか?といつた問題について検討した結果の第1報である。なお以下の記述では限られたスペースのなかでの効率を考え, 文献 (2) および (5) に解説されているところは, できるだけそれらに譲ることとした。

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