2025 年 4 巻 2 号 p. 143-150
【目的】在宅サービスの利用を促すも家族(主介護者)の抵抗感から導入が遅れ,結果的に介護負担感の増加とQOLが低下した事例の振り返りから,在宅介護の継続に求められる介護者支援の在り方を再考すること.【事例紹介】事例はALSを発症した70歳代女性(A氏)の主介護者だった夫である.介護負担感を減らすためにサービス利用量を増やすことを提案したが,主介護者は利用を拒否していた.【経過】介護方法の指導などの介入に加え,主介護者の介護に対する想いを傾聴し言語化を促した.経過とともに主介護者から介護負担感の増悪を示唆する発言が増え,徐々に在宅サービスを導入するようになるも,他者の出入りに対するストレスが増えた.主介護者の介護負担感が限界を迎え在宅療養継続が困難となり,医療機関での療養となり介入は終了した.【結論】傾聴は介護負担感の軽減に一定の効果を有するが,全てではないため,事前に本人・家族(主介護者)と生活の変化に対する計画を整備しておく必要があると考えられた.