【目的】地域在住高齢者を対象にメタボリックシンドローム (MetS; Metabolic Syndrome) および身体機能低下の併存と軽度認知機能障害 (MCI; Mild Cognitive Impairment) の関連を検討することを目的とした。
【方法】垂水研究2019に参加した65歳以上の地域在住高齢者554名 (平均年齢73.7±6.2歳、女性63.4%) のデータを横断的に分析した。MetSは国際糖尿病連合の基準を用いて判定した。身体機能は握力 (男性<28 kg、女性<18 kg) および通常歩行速度 (<1.0 m/秒) で評価し、いずれか、または両方がカットオフ値未満であれば、身体機能低下ありと判定した。MetSおよび身体機能低下の有無から、健常群、MetS単独群 (MetS群)、身体機能低下単独群 (身体機能低下群)、MetSおよび身体機能低下併存群 (併存群) の4群に分類した。認知機能は、National Center for Geriatrics and Gerontology Functional Assessment Tool (NCGG-FAT) により記憶力、注意機能、遂行機能、情報処理速度を評価し、いずれかの領域で年齢と教育歴を考慮した参照値より 1.5SD以上の低下を認めた者をMCIの該当と判定した。MCIの有無を従属変数、MetSおよび身体機能低下の有無で定義された4群を独立変数とし、年齢、性別、教育歴、服薬数を共変量としたロジスティック回帰分析を実施した。
【結果】健常群が191名 (34.5%)、MetS群が218名 (39.4%)、身体機能低下群が62名 (11.2%)、併存群が83名 (15.0%) であった。ロジスティック回帰分析の結果、健常群と比較し、身体機能低下群 (オッズ比:2.39、95%信頼区間:1.17-4.87)、併存群 (オッズ比:2.41、95%信頼区間:1.21-4.79) のそれぞれがMCIと有意な関連を認めた。一方、MetS単独群では健常群と比較したMCIと有意な関連を認めなかった。
【結論】地域在住高齢者において身体機能低下を有すること、およびMetSと身体機能低下が併存していることはMCIを有することと関連することが示唆された。