日本循環器管理研究協議会雑誌
Print ISSN : 0914-7284
国民栄養調査成績に報告されたわが国の食塩摂取量は1987年後, 本当に増加したか
竹森 幸一
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1997 年 32 巻 2 号 p. 115-123

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抄録

国民栄養調査成績に見られるわが国の食塩摂取量は, 調査開始以来一貫して減少してきたが, 1987年を境に上昇に転じた。この要因を解析するために, 1988年の食品類別荷重平均成分表 (以下, 荷重平均成分表) から四訂日本食品標準成分表 (以下, 四訂成分表) への改定と, 1990年における「その他の食品」からの「その他の調味料 (食品番号57) 」 (以下, 「その他の調味料」) の分離新設に焦点を合わせ, 食物摂取量およびビタミンを除く全栄養素摂取量の年次推移を比較検討した。
「その他の食品」の食物摂取量および各栄養素摂取量の年次推移はナトリウム摂取量以外は全て同じパターンで, 1988年に急増し, 1990年に「その他の調味料」に見合うだけ減少した。
1990年から1994年の「その他の食品」と「その他の調味料」の合算値について, 食物摂取量および各栄養素摂取量に対するナトリウム摂取量の比を求め, その平均値に1988年と1989年の「その他の食品」の食物摂取量および各栄養素摂取量を乗じて, 「その他の食品」のナトリウム摂取量修正値を求めた。この修正値で補正した食品総量のナトリウム摂取量は1988年に急増し, その後横ばいに推移した。
この急増は実際の食塩摂取量の増加ではなく, 栄養価算定に使用された成分表の改定や分類方法の変更など算定方法の変更による見かけ上の増加であると考えた。

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