日本循環器管理研究協議会雑誌
Print ISSN : 0914-7284
虚血性心疾患死亡と糖尿病との関連
斉藤 功小澤 秀樹青野 裕士池辺 淑子後藤 朗山下 剛
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1997 年 32 巻 2 号 p. 137-142

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抄録
虚血性心疾患死亡に対する糖尿病のリスクについて, 症例対照研究に準じた研究方法により検討を試みた。
人口41.9万人の大分市における1992-93年の40-74歳の全死亡1857例から, 原死因が心疾患及び虚血性心疾患が含まれる可能性のある死因を全て抽出した。抽出された男女354例について医療記録の調査を行い, MONICA研究の診断基準を用いて虚血性心疾患死亡の再分類を行った。虚血性心疾患死亡に再分類された100例の内, 医療記録より糖尿病, 高血圧, 高脂血症の既往歴の有無を調査し得た88例を症例とした。対照は糖尿病の有病率を把握し得ている大分市近郊のC村において, 老人保健法に基づく基本健康診査を受診した1003人の中から, 症例1人に対し3人を性・年齢 (±2歳) でマッチさせた264例を無作為抽出した。
条件付きロジスティック回帰分析により糖尿病, 高血圧, 高脂血症の3因子でみた場合, 糖尿病の調整済みオッズ比は5.1 (95%信頼区間2.6-9.9) であり, 高血圧, 高脂血症の調整済みオッズ比よりも高かった。本症例の内の約7割は発病から24時間以内の死亡であり, 本研究の結果は死に至るような急激な虚血性心疾患の発生に対し糖尿病のリスクの大きさを示唆するものと思われた。
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