聴能言語学研究
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プロカ失語の非流暢性発話の音声学的分析
寺輪 あき子武田 克彦菅原 勉
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1988 年 5 巻 2 号 p. 57-61

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抄録

プロカ失語の非流暢性発話サンプルのうち,5母音の連続発話について音声学的分析を試みた.サウンド・スペクトログラフを使用し,第1・第2フォルマント周波数の比較を失語症者間(男性3名,女性2名)および,健常者(男性3名,女性2名)との間で行った.各症例の第1・第2フォルマント周波数の変動は,健常者の発話速度の違いによる第1・第2フォルマント周波数の変動よりも大きく,中でも比較的急性期の症例5は,健常者と非常に異なる第1・第2フォルマント周波数をもつことが,分析の結果明らかに示された.これは,歪み音に対する聴覚印象と一致している.症例5には継続実験が行われた.その結果,フォルマント周波数の変動は減少し,健常者のフォルマント周波数に近づいた.以上の結果から,構音運動の企画の障害が,母音の場合でも明らかに示された.

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