抄録
ITPA言語学習能力診断検査で聴覚-音声回路が低下しており,その他に口腔運動,モーラ分解・抽出能力,文字習得に問題のある1構音障害児に対し構音訓練を行い,構音の再学習に関し示唆を得たので報告をする.症例のスピーチには口蓋化構音が認められ,5歳4ヵ月時に週1回の指導を開始した.言語理解力は良好で,助詞を正確に用いた多様な文を話していたので通常の系統的構音訓練を行った.単語の訓練を行う際,表出語彙が限られていることがわかり,本児の問題を言語学習の面から再評価するためにITPAとモーラ分解・抽出力の検査を行ったところ,聴覚的処理能力に問題がみられた.ITPAの結果をもとに視覚的手がかりを用いてモーラ分解・抽出能力の訓練を行った.これらの能力が獲得されるとともに誤り構音の自己修正,非訓練音の自然習得がみられるようになり,明瞭度が改善し,構音障害によるトラブルが減少した.