聴能言語学研究
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発達性感覚失語症の1症例
城野 明子楠本 季佐子久保田 功
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1992 年 9 巻 3 号 p. 98-105

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抄録
5年間経過観察した発達性失語症の1症例(男児)を報告した.初診時3歳7ヵ月,主訴は言語の遅れで,運動,知能,聴力に問題がないと判断された.しかし口頭指示には従えず,発語は「いや」のみで発声も少なかった.対人関係にも多少問題がみられた.その後運動および行動面では発達がみられたが,言語面では全く進歩がなかった.発達性失語症の感覚型と診断が下されたのは,諸検査が行えるようになった6歳7ヵ月時であった.本症例の特徴は次のとおりである.(1)発声も発語も身振りも乏しく伝達意欲が希薄である.(2)ジェスチャーや象徴遊びもなく,象徴機能が未発達である.(3)聴力は正常だが,語音の認知,言葉の理解はできない.なお類似の症例に対しさまざまな診断名が用いられているが,本報告では“発達性感覚失語”を適用した.視覚系を主とした言語治療により理解面には進歩があったが,8歳9ヵ月現在,表出面ではほとんど変化が認められない.
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© 日本コミュニケーション障害学会
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