抄 録:日本の臓器移植は,移植後の成績は世界でトップクラスであるが,その数は先進国の中で著しく少ない。しかし,臓器の移植に関する法律(臓器移植法)制定後25年経過してようやく,脳死下臓器提供が2019年度に94件に達し,2022年度には106件に増加しつつある。人口が半分の隣国韓国で年間500件であるので,今後,日本においても年間1,000件は到達可能と予測される。年間1,000件の臓器提供に対応するために早急に改革が必要である。日本移植学会では,提供にかかわる移植医の負担軽減を目指す「脳死・心停止下リカバリー環境改善委員会」と広く移植医の労働環境を把握し改善のための提言をする「働き方改革委員会」を立ち上げ活動してきた。脳死・心停止下リカバリー環境改善委員会は摘出手術互助制度として,手術機材の共用,施設からの貸出,機材搬送の外部委託からなる手術機材の取り扱いと施設間の協力体制の整備を実施した。働き方改革委員会は,移植医療に携わる医師と移植施設を対象として脳死下・心停止後臓器摘出手術に関する勤務実態,就労管理,補償,待遇にかかわる実態調査を行い機関紙に掲載した。