抄録
大分県杵築市山香町において捕獲された分枝のない大きな角を持つニホンジカの分子遺伝学的特徴を明らかにすることを目的とした。まず、DNAを抽出し、ミトコンドリアDNA のコントロール領域およびチトクロームb領域をPCRで増幅後、シークエンス解析により塩基配列を明らかにした。得られた塩基配列を用いて、既に報告されているニホンジカの亜種であるエゾジカ、ホンシュウジカ、キュウシュウジカおよび中国のニホンジカのものと比較した。その結果、キュウシュウジカと最も高い相同性を示したことから、分枝のない角を持つニホンジカは日本在来のニホンジカであり、環境や突然変異などの影響によりこのような角の形態的変異を獲得したと考えられた。